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輝点移動と構文交替

Last-modified: 2017-05-15 (月) 08:29:27

✧ 輝点移動と構文交替

ゼノスでは一次輝点と二次輝点があります。
一次輝点は主格を帯びる要素に、二次輝点は対格を帯びる要素に固定されているので、
例外なく主語が一次輝点、目的語が二次輝点という事になります。
最初に注意が必要なのは、輝点移動というのは輝点自体が移動するのではなく、文中のある要素を特定の輝点に移動させる事を意味します。

<主対交替>
例えば

VUI HEIT_ЯOG BUTT
彼が帽子を被った

であれば彼が一次輝点、帽子が二次輝点となっています。
これを二次輝点である帽子を一次輝点に変更するには輝点自体を移動させる方法はないので目的語を動かして一次輝点の位置に移動させなければなりません。
しかし目的語を前景化させるために、
一次輝点である主語位置に移動させるには他動詞の状態では不可能なので、

BUTT HAIT_ЯOG
帽子が被さった

のように他動詞から自動詞に言い換える必要があります。
このような輝点移動の為に他動詞から自動詞に交替させる輝点移動を主対交替と言います。
各自動詞と各他動詞の対応関係というのは、
要するにこの輝点移動の際の対応関係を表しています。
では他動詞時の二次輝点である目的語は自動詞に交替して一次輝点に移動したわけですが、他動詞時の一次輝点である主語は自動詞化した際にどこに行ったのかというと、この例の場合は他動格(斜格)に移動しています。
これを背景化と言い、
自動詞は一項動詞という事で、明示は義務的ではないので基本的に二次輝点を一次輝点に輝点移動した際は他動詞の主語は斜格に移動した上で構文上不可視化されていますが、
移動先の斜格を使用する事で、

BUTT HEIT_ЯOG JATTIN VUI
帽子が彼によって被さった

のように可視化する事ができます。
この場合は斜格であるものの他動格を帯びるVUI が二次輝点と考えられるので、
他動詞時の一次輝点は主対交替によって目的語とは逆に二次輝点に移動したという事になります。
この他動詞時の主語(一次輝点)と目的語(二次輝点)を入れ替えるのが輝点移動の基本になります。

<直間反転>
しかし、それ以外にも特殊な輝点移動があります。
自動詞と他動詞の交替をせずに輝点を移動する方法で、
二重他動詞の直接目的語と間接目的語を入れ替える輝点移動です。
通常は本来の直接目的語の移動先はゼノスでは物格になるのですが、具格でも代用できます。
日本語でも同様の入れ替え先は基本的にデ格(具格)で表すので、わかりやすさを優先してひとまず具格で説明します。
(二重他動詞の場合は必須項が一つ増えるので、その必須項は背景というより三次輝点として説明します)

例えば
VUI MADAѤD_ЯOG JAPT PIS DAѤL
彼が壁にペンキを塗った

という二重他動詞構文は
VUI MADAѤD_ЯOG DAѤL VICOO JAPT
彼がペンキで壁を塗った

に言い換える事ができます。
これは与格を帯びる着点と目的語が本来の位置から入れ替わっているのですが、
要するに三次輝点の要素を二次輝点に移動させ、二次輝点の要素を三次輝点に移動させているわけです。
このパターンの入れ替えを「直間反転」と言います。

基本の輝点移動の場合は、他動詞の主語に注目するか、目的語に注目するかの違いでしかなく、動詞自体が変わっているので特に考える必要はないですが、
二重他動詞の二次輝点と三次輝点の反転は注意が必要です。
この例で言えば塗るは再帰系を二重他動詞化した動詞なので、通常のMADARDの意味は「目的語となる物体を移動させ与格で表される着点に付着させる」という意味ですが、
直間反転をすると動詞の意味が変質し、
目的語の位置に入れ替わった着点の状態変化を表す意味に変わります。
つまり

VUI MADAѤD_ЯOG DAѤL VICOO JAPT
彼がペンキで壁を塗った

は決して、「(行為実現の補助的な道具として)ペンキを使って(液状になっている)壁を移動させ、どこか(明示されてない場所)に付着させた」というような意味ではなく、
「主語が壁という着点をペンキを使用した塗るという動作によって(ペンキを壁の構成物にする事で)状態変化をさせた」という意味に変質しています。
ここでいう状態変化というのは所有他動詞のところでの原理と同じようなもので、
この例の場合、壁が移動物であるペンキを広い意味での所有状態(構成物として)に変化するという意味です。
つまりこの場合は移動物を非所有状態から所有状態に変化させる方に着目した表現という事です。
そういった意味での状態変化を表すので、多くの場合同様の輝点移動を行った場合は目的語の部分ではなく全体が変化したようなニュアンスになりますが、それはあくまでも状態変化を意味するが故に発生するニュアンスであり、必ずしも全体変化解釈の意味は変質した動詞の意味には含まれていません。

注意が必要なのは、

VUI MADAѤD_ЯOG JAPT
彼はペンキを塗った

VUI MADAѤD_ЯOG DAѤL
彼は壁を塗った

のように間接目的語がない状態だと通常の意味の方なのか直間反転によって変質してるかの区別はできません(現実的には壁を移動物としてどこかに付着させるという意味には解釈はしないでしょうが)。
という事は、この直間反転として解釈するキーになっているのは通常目的語の位置にあるはずの要素が具格(物格)を帯びるているかどうかという事になるので、一般的には直間反転で表現する場合は

JAPT LENDGH VUI MADAѤD_ЯOG DAѤL
ペンキで彼は壁を塗った

のように、目的語の位置から具格(物格)に移動した要素は文頭に移動させる(つまり補助詞ではなく制御詞を使う)のが一般的です。
これも一種の定義変改と考えられています。
ただ定義変改と言っても、対格言語用の動詞から能格言語用の動詞に再定義されるほどの変化はありません。

例えば

VUI MADAѤD_ЯOG JAPT PIS DAѤL

でいえば、
まず動詞が表す一連の事態は他動者の行為、物体の移動、着点の状態変化の3つという事になりますが、
通常は他動者が一次輝点である主語なので行為の部分に最も意識が向けられているのは通常の構文でも直間反転構文でも同じですが、
通常の構文の場合は行為に次いで物体の移動に意識が向けられており、着点の状態変化については一番関心度が低い背景に近い表現になっています。
しかし、直間反転構文の場合は行為に次いで意識が向けられているのは着点の状態変化の部分という事になり、逆に物体の移動には一番関心度が低い背景のような扱いになっているという違いと考えて頂ければいいと思います。

直間反転は結果の部分だけで言えば俗に言う”壁塗り交替”というものとほぼ同じものと考えて良いと思います。
しかし、おそらく日本語では許容度が低いものでも、ゼノスでは基本的に全ての脱再帰系の二重他動詞の直間反転が可能です。


  • VUI SHAFAFT_ЯOG FÖRM PIS QUI
    彼が彼女に服を着せた

    VUI SHAFAFT_ЯOG QUI VICOO FÖRM
    彼が服で彼女を着せた

上記のように目的語となる移動物を着点に付く状態にさせる系の二重他動詞は直間反転した場合、本来の目的語は必ず具格(物格)に移動します。
しかし、正確には具格でも代用可能というだけで、実際にはゼノスでは二重他動詞の直接目的語は直間反転をした場合、物格に移動する方が一般的です。

そして注意が必要なのは具格で代用できるのはあくまでも、MADAѤD(塗る)、CHITIT(付ける)、SHAFAFT(着せる)などの物を着点に移動させる帰着系の二重他動詞の話です。
PEDGHEIDGH(剥がす)、SULOOL(脱がす)などの起点からの離脱を意味する離反系の二重他動詞は直間反転をする場合に本来の直接目的語は具格では表せず、例外なく物格に移動します。

そこで更に注意が必要なのは日本語ではゼノスでいう離反系の二重他動詞の間接目的語と直接目的語を入れ替えた場合の本来の直接目的語を表す格が存在しない(故に日本語では起点からの離反を意味する系の動詞では壁塗り交替ができない)ので、その場合の物格は例文の日本語訳では無理矢理「び」とします。


  • VUI SULOOL_ЯOG FÖRM SKAW QUI
    彼が彼女から服を脱がした

    VUI SULOOL_ЯOG QUI EDUKK FÖRM
    彼が服び彼女を脱がした

ただ、日本語では直間反転した場合は離反タイプの他動詞の本来の直接目的語を表す格がないですが、
自然言語だと言えないのかというと、そんな事はなく、
英語だと例えば

He cleared the dishes from table

He cleared the table of the dishes

のように、英語のclearはゼノスでいう直間反転をした場合、本来の直接目的語のtableは
ofを帯びる事になります(これは”皿のテーブル”という名詞句としての意味ではないので、ゼノス的に解釈すればこのofはあくまでも本来の直接目的語を表す物格に相当する格として機能していると考えます)。

もう一つ注意が必要なのは単向仲介系となる二重他動詞は、

ЯAI SVUTOOT_ЯOG QUI PIS VUI
私が彼に彼女を走らした

から

ЯAI SVUTOOT_ЯOG VUI VICOO QUI
私が彼女で彼を走らした

のように直間反転は意味が変わってしまうのでゼノスにおいてもこの言い換えはできません。

<主間交替>
更に

VUI MADAѤD_ЯOG JAPT PIS DAѤL
彼が壁にペンキを塗った

という二重他動詞構文は

DAѤL MAѤD_ЯOG JAPT
壁がペンキを(自身に)塗った

のように、二重他動詞の間接目的語を主語位置に移動させた一重他動詞構文に言い換える事ができます。
この他動詞は何かというと所有他動詞です。
なので主語自体は実際には目的語に対しての働きかけがなく、ただ移動物を非所有状態から所有状態への変化を表します。

これは二重他動詞時に三次輝点だったものを一次輝点に移動させるために、一重他動詞構文に言い換えたものです。
このパターンを主間交替と言います。
直間反転とは違い二重他動詞の間接目的語の状態変化に最も着目した表現という事になります。
この場合は二重他動詞時に一次輝点だった主語は他動格に移動しています。
なので、

DAѤL MAѤD_ЯOG JAPT JATTIN VUI
壁が彼によってペンキを(自身に)塗った

のように、明示する必要があります。
しかし、位置が動詞の右側ではそれが主間反転によって動詞の意味が変質しているかどうかが最後にならないとわからないので、

VUI ANCH DAѤL MAѤD_ЯOG JAPT

のようにやはり文頭に移動させるのが一般的です。
これは二重他動詞の時とは逆に三次輝点に主語だったものが移動してる事になるので、主間交替の場合は二重他動詞時の主語の行為の部分は一番関心がない背景に近い表現になっています。

これも
VUI SHAFAFT_ЯOG FÖRM PIS QUI
彼が彼女に服を着せた

VUI ANCH QUI SHAFT_ЯOG FÖRM
彼によって彼女が服を着た

のように基本的に二重他動詞は全て輝点移動による構文交替が可能です。

<主直交替>
その他に、主直交替という輝点移動があります。
これは二重他動詞時の直接目的語を一次輝点にするために主語位置に移動させる構文交替ですが、
これは注意が必要なためにもう一度主間反転から説明します。
主間交替とは二重他動詞の間接目的語を主語位置に移動させるために一重他動詞に交替する輝点移動です。
例えば

VUI CHITIT_ЯES BЯOPAND PIS ËPIT
彼がストラップを携帯端末に付ける

から

ËPIT GENOW CHIT_ЯES PIS BЯOPAND (JATTIN VUI)
携帯端末がストラップを付けている (彼によって)

が主間交替です(わかりやすく継続相にしています)。

これを直接目的語の方を主語位置に移動させると

BЯOPAND GENOW CHIT_ЯES ËPIT (JATTIN VUI)
ストラップが携帯端末を付けている

になり、やや不自然なものの言えなくはないです。
通常は大きいものの方を主体、小さいものの方を付属的に考えるのが普通ですが、
この場合は逆に一般的には付属的な方を主体として見た表現になります。
普通のイメージで考えれば不自然ですが、
極端な話をすれば、巨人が使っている巨大なストラップと小人が使っている小さな携帯端末で考えれば自然な表現と言えなくはないです。
しかし、これが
”彼がストラップを携帯端末に付ける(付けている)”
から言い換えたものだとしたら、厳密には正しくありません。
その場合は元になる二重他動詞の事態が、
間接目的語の携帯端末が定位置でそこに直接目的語のストラップを移動させ付着させての継続状態の必要があり、

ストラップが携帯端末を付けている

なら、ストラップが定位置という解釈になるので、定位置のストラップに携帯端末を移動させて取り付けたという事態である必要があるので、
元の二重他動詞時にストラップが間接目的語でなければ、表されている事態の根本が変わってしまいます。
確かに継続状態だけ見れば、どちらを主体として見るかという違いでしかないですが、
継続状態の前段階の動き(行為段階)の部分がどういった動きかによってはまったく違う事態を表している事になってしまうので、
直接目的語を主語位置に移動させるためには一重他動詞の主語位置に移動させる事は厳密に言えばできません。
上の例のように携帯端末とストラップだと継続状態だけ見れば不自然ではないので、他の例を挙げると、
例えば

VUI MADAѤD_ЯOG JAPT PIS DAѤL
彼がペンキを壁に塗った

JAPT MAѤD_ЯOG DAѤL (JATTIN VUI)
ペンキが壁を塗った (彼によって)

のように言い換える事もできます(他動格部分は解りやすく括弧で分けてます)が、

これも正しくはありません。
一見、「(彼の手によって)主語のペンキが目的語の壁に移動し、付着した」ように解釈できてしまうのは、人間の解釈が入り込む事で無理矢理自然な解釈になっているだけで、
実際にこの文が表しているのは、
ペンキが定位置にあり、(彼の手によって)壁を移動させる事でペンキが自身に壁を塗ったという意味です。
自然な解釈の方であれば、
DAѤL MAѤD_ЯOG JAPT JATTIN VUI
壁がペンキを(自身に)塗った、彼の手によって
である必要があります。

LEWZ PЯOND_ЯOG KOPT
水がコップを満たした

も同様で、
一見、主語の水が移動し、着点の目的語のコップを満たす(水が移動し、コップ内で充満状態になる)という意味のようにイメージされますが、
この文が実際に表しているのは、
定位置の水の中(液体である水が器状になっているという通常あり得ない特殊な状況や、単純に水という名称の容器)に(幾つもの)コップを入れて充満状態にするという意味です。
少なくともゼノスにおいては自然な解釈の方であれば正しくは「コップが水を(自身に)満たす」である必要があります。

一番わかりやすい例を挙げると例えば

VUI GECHECH_ЯOG TERM PIS HAPAM
彼は林檎をパンに挟んだ

は、直間反転すれば

VUI GECHECH_ЯOG HAPAM VICOO TERM
彼はパンを林檎で挟んだ

になります。
この場合前者も後者も二枚のパンの間かもしくはパンの切れ目の間に林檎を設置したという意味です。
(注意が必要なのは、上では挟んだとしていますが、日本語では”挟み込んだ”と考えた方がいいと思います。
違和感あるかもしれないですが、これについては後述します)

そして、主間交替した場合は
HAPAM GECH_ЯOG TERM JATTIN VUI
パンが彼によって林檎を(自身に)挟んだ

になり、これも着目してるのがどれかという違いなだけで事態としては同じです。
しかし、
二重他動詞時の直接目的語を一重他動詞の主語位置に移動させてしまうと、

TERM GECH_ЯOG HAPAM JATTIN VUI
林檎が彼によってパンを挟んだ

になり、これでは二つの林檎の間か林檎の切れ目にパンを挟んだ(設置した)意味になってしまうので、元の二重他動詞時に”林檎にパンを挟む”でなければ、表してる事態の根本が変わってしまいます。
やはり二重他動詞の直接目的語を前景化するには一重他動詞に言い換えはできません。

では二重他動詞時の直接目的語を前景化するために一次輝点に移動するにはどうするかというと、

TERM GACH_ЯOG PIS HAPAM JATTIN VUI
林檎が彼によってパンに挟まった

のように自動詞に言い換える必要があります。

これは着せるも同様に

VUI SHAFAFT_ЯOG FÖRM PIS QUI
彼が彼女に服を着せた

FÖRM SHUFT_ЯOG PIS QUI JATTIN VUI
服が彼によって彼女に着らさった

のようにして表します。

つまり主直交替は一重他動詞を飛ばして二重他動詞から自動詞に交替させる輝点移動という事です(ちなみにこの例の場合は交替した自動詞は従動自動詞です)。

[補足]
ここで少し話しが逸れますが、
挟むについて違和感を感じると思うので、補足しておきます。
ゼノスの再帰系の他動詞は帰着タイプ、離反タイプ、通過タイプに分けられていますが、
更にそこから帰着タイプであれば

遮断類>GINCH(挟む)、VLOUF(覆う)、POUL(包む)、GLINT(囲む)、BOOZ(塞ぐ)など、

充満類>PЯOND(満たす)、

設置類>CHIT(付ける)、PECH(貼る)、GECH(挟む)等、SHANL(飾る)、
TEND(与える)、SHAFT(着る)

移入類>SORV(入れる)、ZAJJ(刺す)

指向類>KARM(向ける)、TIST(指す)

離反タイプであれば

解放類>PAST(離す)、

皆無類>IJOOM(枯渇さす)、

撤去類>GENT(外す)、PEIDGH(剥がす)、VAID(奪う)、SOOL(脱ぐ)

移出類>VEND(出す)、WOOV(吐く)

転向類>HENT(背ける、そらす)

通過タイプであれば

外方類>LEFT(渡らす)、SHKOOD(越えさす)

内方類>SLOOT(通す)、KROѤT(くぐらす)

など幾つかに分けられます(定義や分類、名称はまだ暫定的なものです)。
上記の例は全て一重他動詞なので、わかりやすく二重他動詞として説明すると、
遮断類は「主語となる動作者が直接目的語の物体を移動させ、与格を帯びる着点の特定の範囲・方向を外部と遮断状態にする事を表す動詞」、
充満類は「主語となる動作者が直接目的語の物体を移動させ、与格を帯びる着点の全体や特定の部分(スペースなど)をその移動物によって充満状態にする事を表す動詞」、
設置類は「主語となる動作者が直接目的語の物体を移動させ、与格を帯びる着点にその移動物を付着あるいは設置状態にする事を表す動詞」
移入類は「主語となる動作者が直接目的語の物体を移動させ、与格を帯びる着点の内部にその移動物を移入状態にする事を表す動詞」
指向類は「主語となる動作者が直接目的語の物体を移動させ、与格を帯びる着点(この場合実際は物自体は着点に接近・到達するわけではないので、正確には方向を定める照準点)にその移動物が向いてる状態にする事を表す動詞」

解放類は「主語となる動作者が奪格を帯びる起点から直接目的語の物体を移動させ、特定の範囲・方向を外部に解放状態にする事を表す動詞」、
皆無類は「主語となる動作者が奪格を帯びる起点から直接目的語の物体を移動させ、全体や特定の部分(スペースなど)を皆無・枯渇状態にする事を表す動詞」、
撤去類は「主語となる動作者が奪格を帯びる起点から直接目的語の物体を移動させ、その移動物を撤去状態にする事を表す動詞」
移出類は「主語となる動作者が奪格を帯びる起点から直接目的語の物体を移動させ、その移動物を移出状態にする事を表す動詞」
転向類は「主語となる動作者が奪格を帯びる起点から(この場合実際は物自体は起点に接触しているわけではないので、正確には物体の向きの延長線上にある照準点)から直接目的語の物体を移動させ、その移動物の向きがズレている状態にする事を表す動詞」

外方類は「主語となる動作者が通過格を帯びる通過点の外側から直接目的語の物体を移動させ、その移動物を通過状態にする事を表す動詞」
内方類は「主語となる動作者が通過格を帯びる通過点の内側から直接目的語の物体を移動させ、その移動物を通過状態にする事を表す動詞」

それらの着点、起点、通過点が主語自身に設定されているのが一重他動詞(動詞の内部に着点か起点か通過点が主語に設定されているために表面的には必須項が二項となっている動詞)という事になります(わかりやすい例を示すと「着せる」が二重他動詞で「着る」が一重他動詞)。

この分類は厳密なものではなく、多少曖昧な部分もあります。
例えば”飾る”は上では設置類としてますが、

彼が林檎を壁に飾る

でいえば、物体の移動だけで考えれば壁に設置する動作を表しているだけですが、
飾るの意味を考えると、
移動物を設置する事で場を華やかにするなど場に対して特徴付けをすると考えれば、物理的には壁の一部分に設置しているだけでも、心理的には壁全体の印象を変化させている事になるので、影響具合としては部分というより場全体に影響が充満してると考えれば、充満類に入れる事も可能です。

”塞ぐ”も上では遮断類としてますが、

穴の外側に何かを貼り付ける的な意味での塞ぐだと完全に遮断類といえるものの、
穴などの着点のスペース(内部)に物を移動させて外部と空間的に遮断状態にした場合、結果的に移動物が内部で充満状態になっている場合もあるので一応充満類と考える事(”セメントで穴を塞ぐ”など)も可能といえばです。

上の分類はあくまでも目安程度に考えておいたほうがいいと思います(上位分類の帰着か離反か通過かの違いほど重要ではないので)。

しかし、この説明が必要だったのはこの中で
”挟む”と”包む”は特殊で、通常の二重他動詞構文と直間反転構文では位置関係が逆になってしまうので注意が必要だからです。
まず日本語の場合は遮断類としての挟む(何かで両側から対象を押さえる)と設置類としての挟む(移動物を二つの物の間か一つの対象の切れ目などに設置する)が挟むという動詞一つでまかなわれているせいか、

彼が林檎にパンを挟む

の場合は設置類(林檎-パン-林檎の位置関係)としての解釈が優勢になり、

彼がパンで林檎を挟む

のような場合は、遮断類(パン-林檎-パンの位置関係)としての解釈が優勢になるようです。

これはゼノス的に解釈すれば、
具格を使用すると設置類としての意味から遮断類としての意味に動詞の定義変改が起きてしまうので、格配列的には直間反転でも日本語では設置類としての”挟む”の意味を保持あるいは優勢のまま直間反転する事は不可能と考えられます。

しかしこれでは位置関係が逆になり混乱が生じるため、ゼノスでは挟むは最初から遮断類としての”挟む”と、設置類としての”挟む(挟み込む)”は形態的にも完全に別の動詞として存在しています。
なので、

VUI GECHECH_ЯOG TERM PIS HAPAM
彼がパンに林檎を挟んだ
(彼がパンの切れ目に林檎を設置した=”パン-林檎-パン”の位置関係)

VUI GECHECH_ЯOG HAPAM VICOO TERM
彼が林檎でパンを挟んだ
(彼が林檎を使って二つのパンの間か切れ目を塞いだ=”パン-林檎-パン”の位置関係)

のように設置類としての意味のまま直間反転が可能で、

VUI GININCH_ЯOG OLTABÄѤM PIS TERM
彼が林檎に両手を挟んだ
(彼が着点の林檎に対して両手を移動させて両側から押さえるという動作をした=手-林檎-手の位置関係)

VUI GININCH_ЯOG TERM VICOO OLTABÄѤM
彼が両手で林檎を挟んだ
(彼が両手で林檎を両側から押さえるという動作をした=手-林檎-手の位置関係)

のように遮断類としての意味のまま直間反転が可能なので位置関係が混乱する事はありません。

”包む”は日本語の場合は、

彼が布に林檎を包む

彼が布で林檎を包む

は両方言えるので一見、壁塗り交替的に感じますが、
壁塗り交替だとしたら、前者を壁塗り交替した場合は、

彼が布を林檎で包む

でなければならず、

逆に後者を通常の構文にした場合は、

彼が林檎に布を包む

でなければならないので、例の二つの”包む”は別の動詞と考えられます。
これも挟むと同様に前者が設置類(全方向を覆う形になる布の内側に直接目的語の林檎を移動させてそこに設置状態にする)で後者が遮断類(直接目的語の布を移動させ着点の林檎の全方向を覆う形で遮断状態にする)という事になります。
日本語ではこれも包む一つでまかなわれていますが、ゼノスでは設置類としての包む(POFT)と遮断類としての包む(POUL)の二つがあります。
なので例えば遮断類のPOULを使い、

VUI POUL_ЯOG TERM PIS BLAUN
彼が布に林檎を包んだ

は”林檎が内側で布が外側”の位置関係のような日本語と同様の解釈はできず、
”林檎が外側で布が内側”の位置関係(林檎が覆う形で布が内側にくるように布の全方向を遮断状態にする)という通常あり得ない事態の解釈になってしまうので
通常の構文で”林檎が内側で布が外側”の表現をしたい場合は、

VUI POUL_ЯOG BLAUN PIS TERM
彼が林檎に布を包む

でなければならないので注意が必要になります。

”埋める”の場合は

「彼が林檎を穴に埋める」

「彼が穴を林檎で埋める」

のように日本語では、
前者は設置類としての埋める(間接目的語の着点の内部に直接目的語の移動物を埋め込む=設置する)、
後者は充満類としての埋める(直接目的語の移動物を間接目的語の着点のスペースに移動させて充満状態にする=充満類としての塞ぐ的な意味)、
の二つが”埋める”でまかなわれているように感じますがゼノス的にはこれは、設置類としてが基本で、直間反転した場合に充満類的な解釈になるのは壁塗り交替のように本来は与格を帯びる着点の状態変化の方を重視した意味になる結果発生するニュアンス(場のスペース全体に移動物が埋め込み状態のように)というだけで、挟むや包むとは事情が異なると考えられるために、日本語で埋めるに当たる動詞はDOKD一つしかありません。

ただ、注意が必要なのは例で示した

ストラップが携帯端末を付けている
ペンキが壁を塗った
水がコップを満たした

などは、日本語の場合この動詞が二重他動詞だとしたら話は変わるので、それについては後述します。

<主場反転>
更に自動詞構文で自動詞のまま輝点移動するパターンもあります。
例えば、

LEWZ GENOW PЯIND_ЯOG PIS KOPT
水がコップに満ちた

KOPT GENOW PЯIND_ЯOG EDUKK LEWZ
コップが水で満ちた

のように言い換える事が可能です。

この場合もやはり動詞の意味は変質し、
主語の状態変化(この場合継続相のGENOWが使われているので変化した状態の継続)を表しています。
つまり主語位置にある本来は与格で表される着点が、具格(物格)で表される移動物(所有物)によって充満状態(所有状態)になり、その継続状態という事を意味しています。
通常は、自動詞の背景を前景化する場合所有他動詞構文に言い換える事(主場交替)になりますが、
このように自動詞のまま主語位置に移動させる事も可能です。
本来は場所格や与格、奪格で表される場が、具格(物格)を帯びる構成物を非所有から所有状態への変化に最も着目した意味になります。

これも要するに輝点移動なのですが、
この場合キーになっているのは主語位置に来るはずのものが具格(物格)を帯びているというところなので、

LEWZ ZORCH KOPT GENOW PЯOND_ЯES
水でコップが満ちている

のように、やはり文頭に移動させるのが一般的です。

LEWZ JARP_ЯES PIS VUI
水が彼にかかる

VUI JARP_ЯES EDUKK LEWZ
彼が水にかかる

も同様です。
(実際はこれらの場合も物格を帯びる要素は文頭に移動するのでZORCHを使う事になり、定点系の帰着タイプの自動詞の主場反転では本来の主語は具格で代用は無理で、必ず物格を使用し、自動詞の主場反転での物格は自然な日本語訳では”に”なる場合と”で”になる場合があります)

前者は主語である水が彼という着点に移動する事に最も意識を向けた表現(水が移動する事で彼という場を非占有から占有状態への変化)で、
後者は彼という主語が水という移動物を所有状態に変化するという意味での状態変化(彼という場が水を非所有から所有状態への変化)に最も意識を向けた表現という事です。
注意が必要なのは定点系の自動詞はそもそもが主語の移動の意味が暗黙にある自動詞なので本来の主語は移動物と考えます(継続段階だけ見れば構成物ですが)。

ちなみにこれも日本語では不自然なもののゼノスでは全ての自動詞で主場反転が可能なので、
BUTT HAIT_ЯOG PIS VUI
帽子が彼に被さった

VUI HAIT_ЯOG EDUKK BUTT
彼が帽子で被さった
(これも実際は制御詞を使い、
BUTT ZORCH VUI HAIT_ЯOG
のように文頭に移動させます)

のような言い換え(この場合の物格は自然な日本語にする場合は”で”になります)もでき、
起点からの離脱を意味する離反タイプの自動詞でも

BUTT SARL_ЯOG SKAW VUI
帽子が彼から脱げた

VUI SARL_ЯOG EDUKK BUTT
彼が帽子び脱げた
(これも実際は制御詞を使い、
BUTT ZORCH VUI SARL_ЯOG
のように文頭に移動させます)

のように言い換えが可能です(離反タイプの場合は二重他動詞の時と同様に日本語では対応する格がないのでここでは無理矢理”び”としてます)。

その他に、任意系も基本的には全て主場反転が可能です。
任意系の自動詞の”光る”でいえば、

TERM GENOW PЯAYV_ЯES VEW HAYME
林檎が部屋で光っている

HAYME GENOW PЯAYV_ЯES VICOO TERM
部屋が林檎で光っている

に言い換える事ができます。
この場合もキーになっているのは主語位置に来るはずのものが具格(物格)を帯びているというところなので、

TERM LENDGH HAYME GENOW PЯAYV_ЯES
林檎で部屋が光っている

のように、やはり文頭に移動させるのが一般的です。
これは要するに

bees are swarming in the garden

the garden is swarming with bees

のような英語のSWARM型と言われる場所格交替とほぼ同じものです。